海外勤務者健康管理研修会

報告 第1回海外勤務者健康管理研修会

2006年7月1日に標記研修会が海外勤務者健康管理全国協議会と日本産業衛生学会近畿地方会、大阪府医師会、大阪産業保健推進センターの共催で、大阪労災病院で開催されました。当日は大阪府下からは勿論、全国から多数の産業医や産業保健スタッフのご出席を頂き、2つのシンポジウムで活発な討論がなされました。

研修会前半の「赴任前教育のあり方」のシンポジウム(座長、橋本博先生 (独) 大阪産業保健推進センター相談員)では、まず、大阪労災病院海外勤務健康管理プラザ大阪室長の野村誠先生が、労働者健康福祉機構が毎年実施している、海外勤務者に対する支援事業としての海外巡回医療相談事業の実情について、異国における支援活動の写真を含めて紹介されました。

次に松下電器健康保険組合松下健康管理センターの亀田孝夫先生より、同社の海外勤務者および帯同家族に対する赴任前教育について、

(1)集団指導と個別指導を受けるシステムになっていること、「集団教育」は、会社主体で行う「赴任前研修」の一部として社員と帯同家族に分けて実施し、主に現地の衛生状況・日常生活上の注意・医療システム・医療状況と推奨医療機関・推奨予防接種・有用なインターネットHP紹介・生活習慣病とメンタルヘルス対策・狭心症や心筋梗塞の症状・緊急時の対応方法などについて説明していること、「個別教育」については、同社の渡航者は原則として同社の健康保険組合の運営する人間ドックで渡航前健診を受けるので、その結果説明時に実施していること、

(2)これらの教育をするもとになる情報を収集する手段として、医療に関する海外巡回を1980年から毎年、4〜6回程度実施し、渡航前教育に従事する医師が現地の事業所・住居・医療機関・日本大使館の医務官や武官・救急医療会社・食料品店・飲食店・レジャー施設・学校などを訪問していること、などの紹介がありました。

次に百数十ヵ所に海外拠点を設置しているグローバル企業としての立場で伊藤忠商事(株)人事部健康管理室長の長谷川恭一先生より、赴任前研修の内容、特に海外生活における健康管理、海外安全対策、異文化との付き合い方などについてポイントをあげて解説頂きました。
最後に、(財)近畿健康管理センター理事長の木村隆先生より、税関や検疫所などがなく支援が得られにくい地域において、海外出張者・派遣者の健康診断、予防接種をはじめとする多様なニーズに応えてこられた実績から問題点をご指摘頂きました。

後半の「新型インフルエンザのパンデミックに備えて」のシンポジウムでは、座長の(独)海外勤務健康管理センター所長代理の濱田篤郎先生が、H5N1ウイルスがWHOの流行段階で限定的にヒト・ヒト間に感染しうるフェーズ4-5の段階に近付いていること、日本政府が今年6月にインフルエンザ(H5N1)を指定感染症に定めたこと、しかるに日本社会の関心は低下していること、などを指摘され、警鐘をならされました。

続いて、東レ(株)滋賀事業場健康管理センター所長の中西一郎先生が、昨年インドネシアにおける鳥インフルエンザ感染事例が現地工場近くで発生した時の病院確保、インフルエンザ予防接種、帰国順位の決定、などフェーズに応じた対策について話され、将来、新型インフルエンザが海外でパンデミックに至った時の従業員やその家族への対応、および事業所としての対策について詳述頂きました。

海外勤務者健康管理全国協議会事務局
久保田 昌詞
((独)労働者健康福祉機構 大阪労災病院 勤労者予防医療センター)

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